公害と公害病について

※作成時の法律、判例に基づく記事であり、作成後の法改正、判例変更等は反映しておりません。

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公害と公害病について

環境汚染を原因として発症する病気として「公害病」がありますが、「公害」と「公害病」という用語はどのような関係にあるのでしょうか。
 平凡社の世界大百科事典では、公害病を「大気汚染,水質汚染,土壌汚染,騒音・振動など公害を原因または補助因として起きた疾病」としており、これによれば、公害病は公害に含まれないこととなります。
 一方、公害病である水俣病に関する代表的な書籍の一つである原田正純著『水俣病』(岩波書店、1972)の表紙カバーには、「水俣病 公害病の中でも大規模で最も悲惨なものの一つ」との記述があり、同著の「はじめに」の章には、「水俣病は公害の原点とも言われている」との記述あることから、同著では公害病である水俣病も公害の一部を構成するものであると考えているとも読み取れます。
 刊行されている書籍では、水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病及び四日市公害を併せて「四大公害病」と称するものが多い(政野淳子著『四大公害病』(中央公論新社、2013)等)のですが、ネット上で閲覧できる大学教員が学生向けに作成している資料の中には「四大公害」と称しているものも確認されています。
 水俣病に関しては、その公害の発生から公害病である水俣病に罹患した被害者の補償問題までを含めて「水俣病事件」と述べる文献も存在しています。
 尚、環境基本法第2条第3項では、「この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁・・・、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下・・・及び悪臭によって、人の健康又は生活環境・・・に係る被害が生ずることをいう」と定義されていることから、同法では、「公害」は大気・水質・土壌などの自然環境の汚染状態のみならずそれらにより引き起こされる人の健康被害である「公害病」の患者が発生している社会的事実までを含んでいるとも捉えられます。

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