法律上の期間、期限など日に関すること

※作成時の法律、判例に基づく記事であり、作成後の法改正、判例変更等は反映しておりません。

法律上の日にちの問題

法律では、日に関しては、様々な規定があり、様々な局面で厳格な運用がされています。
しかし、一般社会で用いられている日にちの観念と異なっている点もあり、深刻な問題を生じることがあります。
特に訴訟の控訴、上告の期限に関しては注意が必要です。民事訴訟の1審の判決で不満があるときには、控訴できますが、この控訴を出来る期間も民事訴訟法285条で2週間と定められています。
ところが、その2週間の起算点はいつなのか、2週間目の何時までなのか、2週間以内に何をしなければならないのか等、考えると疑問点がいくつか出てきます。

期間と期限

法律問題(ここでは、特に断りのない限り民事事件を念頭に置いて述べます。)で日にちが問題となるのは、主に期間と期限についてです。期間とは開始と満了の間の連続した時間の全てを指すこととなります(例えば、8月1日を開始日、9月30日を満了日とする期間には、8月15日も9月15日も含まれます。)。
一方、期限とは、ある一時点の時を指す概念です。

期間の起算点

期間の計算上の起算点がいつになるかについては、時間によって期間を定める場合(例えば、35時間、48時間等、)は、期間は今現在(即時)を起算点として今からの時間で計算することになります(民法139条参照)。尚、時間で期間を定める方法を「自然的計算方法」といいます。
一方、前述の控訴期間のように、期間を週で定めていたり、あるいは年、月、日で定めているような場合は、期間の初日は計算上考慮せず、その翌日が計算上の起算日となります。このように期間の開始日の初日を期間計算上考慮しないことを「初日不算入」といいます。例えば、今が7月12日の正午で、1カ月を期間と定めた場合、起算日は7月13日ということになります。ただし、特に開始日を零時と定めていた場合は、例外的にその日が起算日となります。例えば、6月中に7月12日を開始日とする1カ月を期間と決めていたような場合には、7月12日を計算上の起算日とします(民法140条参照)。尚、このように、日、週、月、年で期間を定める方法を「暦法的計算方法」といいます。

期間の満了の計算

自然的計算方法の場合

それでは、期間の満了の計算はどうするのでしょうか。
自然的計算方法で期間を定めた場合は、単純に現在の時刻に期間の時間を足せば良いので話は簡単です。例えば、7月12日正午から48時間を期間とすれば、起算点は7月12日正午で、満了は7月14日正午ということになります。

暦法的計算方法の場合

しかし、暦法的計算方法の場合は少し面倒な話が出てきます。
まず、原則的には、月、年に関しては暦により決まります(尚、特に契約上、1月を30日として計算する旨の定めがあれば、原則として契約上の規定が優先します(民法138条参照))。
ここで、勘違いしやすいのですが、起算日が7月12日の場合、1月の期間の満了は、応当日の8月12日ではなく、8月11日の終わり(8月12日零時の直前)となります(民法141条、143条参照)。

期間の末日が日曜・祝日・休日の場合

更に、期間の末日が日曜日や祝日、休日に当たるような場合、あるいはその日に取引しない慣習がある場合には、その翌日が期間の末日となります(民法142条参照)。
例えば、7月16日が起算日で期間が1カ月の場合、本来であれば満期日は8月15日となりますが、8月15日が日曜日であれば、翌日の8月16日が満期となります。

月末の扱い

それでは、1月31日を起算日、期間を1カ月とした場合、満期日はいつになるのでしょうか。1月31日の1カ月後は2月30日となりそうですが、2月は28日までしかありません。
このように、応答日の前日がないような場合、その月の末日が満期日となります(民法143条2項但書参照)。

民事訴訟の控訴期限・上告期限

冒頭で例に出しました、民事訴訟の控訴に関してですが、民事訴訟法285条では、

控訴は、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。

民事訴訟法285条

と規定されていますが、「期間の計算については、民法の期間に関する規定に従う」(民事訴訟法95条1項)とされていますので、これまで、述べてきた計算方法により期間を算出することとなります。尚、不変期間とは、裁判所の裁量によっても期間を変更できない、つまり、裁判所でも期間を2週間から変えることはできない(権限がない)ことを意味します。
ここでは、一般的な判決文での判決の場合を考えてみます。まず、判決正本を裁判所の窓口(書記官室等)で受領するか、あるいは判決書が特別送達郵便で郵送されてきて受領したのが、仮に7月12日の13時であったとします。そうしますと、2週間の期間の起算日は7月13日ということとなり、2週間の応当日が7月27日なので、その前日の7月26日が控訴期限ということになります。
弁護士を代理人としていた場合、通常は弁護士が判決正本を受領していますので、弁護士に判決正本を受領した日を確かめておいた方が良いと思われます。
尚、裁判所の場合、土曜日もお休みなので、起算日から2週間後の日(ここでは、応当日ではなく、応当日の前日を指すこととします。)が土曜日に当たる場合、あるいは日曜日に当たる場合は、月曜日(月曜日が祝日・休日等でなければ)が控訴期限となります。ゴールデンウイークが起算日から2週間目に当たるような場合には、少しだけ控訴期限まで余裕が生じることとなります。

上告期間に関しましては、民事訴訟法313条で控訴期間を定めた民事訴訟法285条が準用されています。そこで、上告期限を考えるにあたっては、控訴期限は一審の判決書を受領した日を起算日とするのに対し、上告期限は控訴審の判決書を受領した日が起算日となるという点以外は、日数の数え方など控訴期限を考える場合と変わりません。

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