雇止めにあった時、法律相談前に押さえたい基本情報

※作成時の法律、判例に基づく記事であり、作成後の法改正、判例変更等は反映しておりません。
ポイント

  • 雇止めに際しては、雇止め通知、雇止め理由書・雇止め理由証明書など、解雇と類似した制度があります。

  • 雇止めも無効と判断されることがあり、無効と判断され、雇止めの対象となった従業員が契約の更新を求めれば、契約は従前の条件で継続されたこととなり、通常は、雇止め後の賃金を未払い賃金として請求し得ることとなります。

雇止めとは

いわゆる正社員のように、期間の定めのない労働契約を締結している従業員に対し、パート社員のように、期間の定めのある労働契約(有期雇用契約)を締結している従業員(有期労働者)について、雇用契約の満了時に会社が契約の更新を拒否することを雇止めといいます。

このような有期雇用の従業員は、雇用契約の満了時に会社が契約更新を拒否するのではないかという不安を感じることも多く、その雇用は不安定なものとなっています。
特に、長年にわたり有期雇用契約の更新が続けられ、実質的には無期労働契約と変わりがないような状態にありながら、いつでも契約更新を拒否され失業し得るような不安定な労働環境にある従業員の保護のため、平成24年の労働契約法の改正では、有期雇用契約の契約期間の累計が5年を超えると、従業員は、会社に対して、無期雇用契約の締結を求める権利(無期転換申込権)が生じることとなりました。この点につきましては、既に別の記事でご説明しておりますので、そちらの記事をご参考にしてください

雇止めの位置付け

雇止めは失業するという面では、期間の定めのない無期雇用契約を締結している従業員の解雇と同様な意味合いを有するものといえます。
しかし、契約形式からしますと、期間を定めて終期のある契約の形態をとっていることから、契約満了時に、契約の一方当事者である会社は、新たな契約を締結するのかしないのかを自由に決められそうにも思われます。

しかし、雇用関係を生活の基盤として契約の更新に対する強い期待を抱き、有期雇用契約で働いている有期雇用の従業員も少なくないと思われますし、上記のように、有期雇用契約の更新を重ね、実質的には無期雇用と変わらないような状態となっているケースもあります。そのような有期雇用従業員からしますと、雇止めは、期間の定めのない労働契約の正社員の解雇と同じような影響が生じるものと言い得ます。

雇止めの手続きについて

労働基準法14条と「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」

このような、雇止めの性質に鑑み、労働基準法14条では、

(契約期間等)
第十四条 
(1項省略)
② 厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。
③ 行政官庁は、前項の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

労働基準法第14条

と規定し、これに基づき、厚生労働省告示第357号で「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(以下「同基準」といいます。)が定められました。同基準は、その後の改正を経て、現在は次のようになっています。

(雇止めの予告)
第一条 使用者は、期間の定めのある労働契約(当該契約を三回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第二項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の三十日前までに、その予告をしなければならない。
(雇止めの理由の明示)
第二条 前条の場合において、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2 期間の定めのある労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
(契約期間についての配慮)
第三条 使用者は、期間の定めのある労働契約(当該契約を一回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準

雇止め予告

同基準第1条により、雇止めをする際には、少なくとも契約満了日の30日前までに雇止め予告が必要であるとされています。これは、解雇の手続きにおける解雇予告と同様な規定であると考えることが出来ます。ただし、解雇時の解雇予告手当に類似した制度は、特に設けられていません。

雇止め理由書、雇止め理由証明書

更に、同基準第2条により、雇止め予告の際、あるいは雇止めをした際、従業員から求めれば、雇止めの理由を明示した雇止め理由書雇止め理由証明書などを会社は交付しなければなりません。

尚、有期雇用の開始時には、労働基準法15条1項に基づく労働基準法施行規則第5条などにより、労働条件通知書などで有期雇用契約の更新の有無とその判断基準を明示することとなっています。

雇止めとの比較で参考となる解雇における解雇予告、解雇予告手当などの問題は、下記のブログ記事でご説明しておりますので、参考にしていただければと思います。

雇止めの有効性の問題

雇止めの無効とその効果

前述のように、雇止めは、期間の定めのない労働契約の正社員などの解雇と類似した影響が生じ得るものであることから、雇止めも、会社が自由になし得るものではなく、一定の場合は雇止めが無効と判断されることがあります。

無効と判断された場合、雇用契約は更新されたものと扱われ、雇止め以降の期間に関して未払い賃金を請求し得ることとなる点は、解雇無効の場合と同様です。
訴訟で救済を求める場合は、雇用契約上の権利を有することの地位確認請求未払い賃金の支払請求を提起することが多いことも解雇無効を争う場合と同様です。

労働契約法19条と雇止め有効性判断基準

同じ有期雇用といっても、様々な形態の働き方があることから、一定の類型化をはかって、雇止めからの保護を図るようにされています。
一定の場合には、雇止めも解雇に類似した意味合いを有することから、実質的に解雇と同様に位置づけ得る雇止めに関しては、解雇の有効性判断時に用いられる解雇権濫用法理を類推適用して判断する判例法理が採用されてきましたが、労働契約法の改正により、19条で、

(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

労働契約法第19条

とこれが、成文化されました。

これにより、㋐第1号から、反復継続して雇用契約が更新されてきた場合、㋑第2号から、契約更新に対する合理的な期待があると認められる場合には、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときには雇止めは無効となり、従業員が雇用契約の更新を申し入れた場合には、雇止め前の労働条件で雇用契約が継続されたこととあることが条文上も明確になりました。

上記の㋐に該当性に関しては、反復更新の回数および更新前に次期の契約内容確認、契約書の作成がなされたかなどの事情から判断されます。
一方、㋑に関しては、従事する業務内容、㋐と同様な更新回数・更新状況、契約時の更新に関するやり取りなどから判断されます。

有期雇用の従業員の契約期間中の解雇について

このような雇止めの問題と別に、有期雇用の従業員の契約期間中の解雇の問題があります。

この点につきましては、労働契約法17条1項において、

(契約期間中の解雇等)
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
(2項省略)

労働契約法第17条1項

と規定されており、期間の定めのない労働契約における解雇の場合より、強い事由がない限り有期雇用の従業員は解雇できないと考えられています。

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