退職届と退職願の違いなど会社を辞めようと考えたとき押さえたいこと

※作成時の法律、判例に基づく記事であり、作成後の法改正、判例変更等は反映しておりません。

退職は法的にはどのような意味があるのでしょうか

会社(使用者)と従業員(労働者)の間では、入社時に雇用契約(労働契約)が成立しています。
労働条件通知書の交付のみで、「雇用(労働)契約書」という書面を作成していない場合でも、雇用契約は成立しています。

退職は、会社と従業員の間のこの雇用契約が終了することを意味します。

雇用契約の終了事由にはどのようなものがあるのでしょうか

有期雇用契約の契約期間到来による終了

代表的な雇用契約の終了事由(終了する理由あるいは事情のことです。)としては、まず、有期雇用契約(契約期間の定めのある雇用契約、アルバイトでよくあるような契約の終了日が定められている雇用契約)の期間の到来による終了があります。

しかし、この有期雇用契約では、会社が契約の更新を拒絶したような場合、雇止めの問題が生じることがあります。
雇止めの問題に関しましては、下記のブログ記事で扱っていますので、参考にしていただければ幸いです。

定年の到来による終了

期間の定めのない雇用契約の従業員(いわゆる正社員など)では、定年の到来により、雇用契約が終了することがあります。

解雇による終了

解雇により、雇用契約期間中に雇用契約が終了することがあります。
解雇とは、雇用契約の一方当事者である会社が、一方的に雇用契約を解約するものです。
解雇には、様々な問題が生じますが、まずは、下記のブログ記事をご覧いただければと思います。

従業員からの退職申出による終了

従業員が退職を申し出ることにより、雇用契約期間中に雇用契約が終了することがあります。
この形態には、

  • 退職届提出による退職
  • 退職願の提出による退職

があります。

退職届と退職願の提出にはどのような違いがあるのでしょうか

退職届の提出にはどのような意味があるのでしょうか

退職届の提出とは、一般的には、辞職を意味し、従業員が、雇用契約期間中に雇用契約を解約する意思表示といえます。

退職届の提出による退職は、雇用契約の一方当事者である従業員からの一方的な雇用契約の解約となります。
このような退職届の性質から、退職届が会社に届いた段階で、従業員からの雇用契約解約の意思表示が会社に届いたこととなります。
したがいまして、退職届が会社に届いたときより後には、退職届の撤回は原則としてできなくなると考えられています。

ただし、標題が「退職届」となっていても、「退職願」と同様の趣旨のものとして扱われることもあり得ます。その場合は、退職願と同様に撤回し得ることがあります。

退職届の問題に関しましては、下記のブログ記事でも扱っていますので、参考にしていただければと思います。

退職願の提出にはどのような意味があるのでしょうか

退職願の提出による退職には、依願退職と呼ばれるケースが含まれ、合意退職の形態となります。

退職願による退職は、雇用契約の合意解約に向けた従業員の意思表示といえます。
このように、退職願による雇用契約の終了は、雇用契約の合意解約となることから、会社が雇用契約の合意解約に承諾することにより、はじめて合意退職として契約解除の効果が生じることとなります。

この退職願の問題に関しましては、下記のブログ記事でも扱っていますので、参考にしていただければと思います。

退職届と退職願はどのような点に違いがあるのでしょうか

上記のように、退職届の提出により、会社の意思とは無関係に、従業員の一方的な意思により、雇用契約が終了することとなります。
そこで、この雇用契約の終了に向けた従業員の意思表示といえる退職届が、会社に届いた段階で効力が生じることとなります。

一方、退職願は、会社の同意があってはじめて合意解約の効力が生じることとなります。

このように、退職届では会社の同意なく雇用契約が解約されるのに対し、退職願では、会社の同意がなければ解約されないという点に違いがあります。
この法的な効果発生時点と関連して、退職届は、会社に届けば撤回できませんが、退職願は、会社の承諾がなされる前であれば撤回できるという点に違いがあります。
ただし、退職願の場合でも、実際には、人事の決定権者が受理した段階で、承諾がなされたものとして、撤回できなくなるケースが多いものと思われます。

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