遺言について相続人が知っておきたいこと~円滑な相続手続き実現のため

※作成時の法律、判例に基づく記事であり、作成後の法改正、判例変更等は反映しておりません。
この記事で扱っている問題

ここでは、被相続人がなくなったときに、相続に関し、相続人が最初に押さえておいた方がよい、遺言の意味、遺言書の探し方、遺言書が見つかった時に最初に考えなければならないことなど、遺言に関する基本的事項の簡略な解説をおこなっています。

「遺言」「遺言書」とは

遺言とは、亡くなった人(相続との関係では「被相続人」といいます。以下「被相続人」といいます。)が生前に残した、自分の死後の法律関係を規定する最終の意思表示とされています。
主に民法の960条~1027条に規定されています。

この「遺言」は、一般的には「ゆいごん」と読まれますが、法律用語としては、「いごん」と読まれます。
ただし、「いごん」は、民法の要件を充たしたものの呼称で、「ゆいごん」に包含されるとの考え方もあるようです。

遺言は原則として書面で作成することとなっており、遺言の内容を書面にしたものを「遺言書」(「遺言状」ということもありますが、民法では、「遺言書」が使われています(民法1004条1項参照)。)といいます。

遺言の種類について

遺言の種類について

一般的な遺言としては、

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言

があります。
近時では、自筆証書遺言を遺言書保管所(法務局)で保管してもらうこともできるようになりました(自筆証書遺言書保管制度)が、この預かってもらう遺言書も法的には自筆証書遺言であることとには変わりはありません。

遺言書の種類に関しては、下記の記事で解説しています。

遺言書はどのように探すのでしょうか

被相続人が亡くなると、何もしなくても相続が開始します。

上記のとおり、遺言は、被相続人が自分の死後の法律関係を定めたものであることから、被相続人が残した財産(この財産を遺産あるいは相続財産といいます。)の分配(相続)の際、優先的に扱われるのが原則です。
そこで、被相続人が亡くなり、相続を考えるにあたっては、まず、遺言が残されているかを確認する必要があります。

遺言書は、特定の人に預けられていたり、わかりやすい場所にしまわれたりしている場合が多く、また生前に相続人に対し、遺言書を作成したことと、その保管方法、場所について説明しているケースが多いようです。
その場合、遺言の有無あるいは保管場所が問題とはなりませんが、急死したときなどには、遺言の有無および所在が問題となることもあります。

まず、被相続人が住んでいた家の中、取引銀行の貸金の中など探し、それでも遺言の有無、所在が不明な場合は、

  • 公正証書遺言を作成していないか確認
  • 遺言書保管所に預けられていないか確認

していくこととなります。

まず、公正証書遺言が作成されていないかは、相続人、受遺者であれば、最寄りの公証役場で確認することが可能です。
作成されていれば、閲覧、謄本の取得が可能となります。

次に、遺言書保管所に預けられている場合、被相続人が生前に手続きをしていれば、被相続人の死後に、相続人あるいは遺言執行者などのうち1人に対し、遺言書を預かっていることが通知されてきます。
通知がない場合、相続人,受遺者などは、法務局で遺言書保管の有無の確認、閲覧をすることができます。

また、稀なケースではありますが、受遺者などが知らないうちに、(下記で解説します)自筆証書遺言の検認手続きが取られていることもあります。
その場合、被相続人が亡くなったときの住所地を管轄する家庭裁判所へ問い合わせ、検認がおこなわれたかを確認できる場合もあります。

遺言書が見つかったときに最初にしなければならないこと

公正証書遺言が残されていた場合、遺言の内容を確認することとなります。

一方、自筆証書遺言が残されていた場合、相続人あるいは遺言執行者は、すみやかに家庭裁判所に対し、検認の申立てをする必要があります。
尚、遺言書保管所に預けられていた場合は、自筆証書遺言ではありますが、検認の手続は不要です。

検認に関しましては下記の記事で解説しています。

公正証書遺言、自筆証書遺言のいずれであっても、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者として指定された人に、遺言執行者に就職する意思があるかを確認し、就職の意思があるような場合には、相続人は遺産を勝手に処分してはいけません。

遺言執行者については、下記の記事で解説しています。

遺言書を隠避、破棄した場合はどうなるのでしょうか

相続人が、遺言書を隠したり破棄したりすることは相続欠格事由とされており、隠したり破棄したりすると、相続人の地位を失い、遺産を相続できなくなることがあります(民法891条5号参照)。

相続欠格に関しましては下記の記事で解説しています。

遺言が無効となる場合について

遺言は、作成時の遺言者(被相続人)に意思能力の問題があったような場合、無効となることもあります。
また、主に自筆証書遺言に関しては、その形式面に問題があり、無効となる場合もあります。
更に、遺言書が改ざん、偽造された場合は無効となり得ます。
公正証書遺言に関しても、被相続人の意思能力の関係などで無効となることがあります。
尚、自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合でも、遺言保管所は遺言書の有効性まで保証しているものではありませんので、形式面でも無効となることはあり得ます。

遺言の無効、および無効となった場合の対処方法に関しては、下記の記事で解説しています。

遺言が複数存在する場合はどうするのでしょうか

遺言が複数存在する場合でも、すべての遺言の内容が、同時に矛盾なく実現できるような場合(たとえば、2つの遺言が残されており、一方が自宅の相続、もう一方が別荘の相続に関するものであったような場合)は、すべての遺言は有効です。

しかし、複数の遺言が残されており、同時に矛盾なく実現することができないような場合(たとえば、2つの遺言が残されており、2つとも1軒しかない自宅の相続に関するものであったような場合)、矛盾する部分に関しては、後に作成された遺言のみが有効となります。

遺言の執行について

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が遺言の内容とおり相続、遺贈がおこなわれるよう手続きをおこないます。

遺言の執行に際しては、遺言の内容が不明瞭であったりして、その解釈が問題となる場合もあります。
また、遺言執行時には、その他にもさまざまな問題が生じ得ます。

遺言の内容の解釈の問題に関しては下記の記事で解説しています。

遺言執行に関する問題は下記の記事でも扱っています。

遺言により相続する遺産が少ない相続人について

遺言から外された相続人、あるいは遺言により相続する遺産が一定割合(遺留分)より少ない相続人は、他の相続人に対して遺留分侵害額請求権を行使できることがあります。

遺留分と遺留分侵害額請求権については、下記の記事で解説しています。

遺言と遺産分割の関係について

遺言が残されている場合でも、相続人、受遺者の合意があれば、遺言と異なる方法で遺産を分割することも可能です。
また、遺言で一部の遺産の帰属のみ指定されているような場合、指定されていない遺産に関しては、遺産分割協議で分配することとなります。
また、遺言がない場合も同様に遺産分割協議をおこなうこととなります。

遺産分割協議に関しては下記の記事で解説しています。

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