誰が何のためにどうやって演奏すると著作権の問題が生じるでしょうか?

この記事で扱っている問題

音楽教室での楽曲の演奏(歌唱)時、その楽曲の著作権者(実際には著作権の管理をおこなっている著作権管理事業者)に対する使用料の支払い義務が生じるのかが問題となった裁判の上告審判決が先日下されました(最判令和4年10月24日、控訴審:知財高裁判決令和3年3月18日、一審:東京地判令和2年2月28日)。

この裁判では音楽教室の指導者の演奏(歌唱)と音楽教室に通う生徒の演奏(歌唱)が別々に問題となっています。

ここでは、楽曲の著作権と著作権侵害が生じうる範囲について、著作権法およびその関連法規の解説を加えた上で、この裁判の判決がどのような意味をもっているかを考えてみます。

著作権の内容について

楽曲の作詞・作曲者、小説の筆者などは、楽曲、小説などに対する、独占的、排他的な権利を有しており、その権利のことを著作権といいます。

著作権に関しては、主に著作権法に規定されており、著作権に関する用語の法的な定義は、著作権法2条に規定されています。

そして、著作権の内容に関しては著作権法10条~78条の2で規定され、上記の裁判において、音楽教室の楽曲演奏に関連して問題となった著作権については、同法17条および22条において次のように規定されています。

(著作者の権利)
第十七条 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
2 著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。

(上演権及び演奏権)
第二十二条 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

著作権法17条、同法22条

そこで、著作権法22条に規定されている「著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し、又は演奏する」ときには、著作権者に許諾を得る必要があり、一般的には著作権者に対し使用料を支払うこととなります。

ところで、楽曲の場合、多くの著作権者(作詞・作曲者など)は、著作権管理事業者に著作権の管理を委託しており、実際の使用料の徴収などについては、その著作権管理事業者がおこなっています。
この著作権管理事業に関しては、著作権等管理事業法という法律に規定されています。

どのような演奏が著作権法22条に抵触するのでしょうか

歌唱も演奏に含まれます

先日、あるバンドのライブ映像を見ていたときに、ボーカルの人が「次は(曲名)を歌います」といったあとで、「演奏します」とすぐに言い直していました。
そのボーカリストは、主語を「私」ではなく「私たち」としていうべきだと思い、言い直したものだと思いますが、著作権法の観点からは大変興味深いものでした。
演奏をバックに歌うといういい方もありますので、用語として、歌唱は必ずしも演奏に含まれるとはいえないように思われます。
しかし、著作権法2条1項16号では、「・・・演奏(歌唱を含む。以下同じ。)・・・」と規定されており、歌唱が演奏に含まれることを明文化しています。

そこで、ここでは、とくに断りのない限り、「演奏」という言葉には「歌唱」も含まれるものとします。

演奏には録音・録画の再生、配信も含まれます

演奏といいますと、一般的には観客を前にしたライブ演奏を思い浮かべますが、著作権法2条7項では、

この法律において・・・「演奏」・・・には、著作物の・・・演奏・・・で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の・・・演奏・・・を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。

とされており、演奏を録音・録画したものを再生(たとえば、CD、ライブ映像DVDの再生)すること、ライブ会場外のパブリックビューイングのような形態も含まれることがわかります。

ただし、テレビ放送などは含まれないこととなります。

公衆に直接見聞かせするとは

上記に引用しました著作権法22条からしますと、「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的」として演奏する場合に、著作権侵害の問題が生じ、著作権者に対し使用料を支払う必要が出てくると考えることができます。

逆に、公衆に直接見聞かせさせるものではなければ、使用料を払わなくても良さそうです。

そこで、どのようなときに、公衆に直接見聞かせしたといいうるのかが、問題となります。

一般的に、「公衆」とは、不特定の者、あるいは不特定多数の者を指す場合に用いられるとされますが、著作権との関係では、少し意味が異なります。

著作権法2条5項は、「この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。」と規定しており、多数の者であれば、その者たちが不特定人ではなく、特定人の場合でも「公衆」に該当することがわかります。
つまり、特定の少数の者のみが、「公衆」に該当しないということになり、特定の少数人に対し演奏する場合は、「公衆」に直接見聞かせすることとはなりません。

ただし、この「少数」が何人以下であるかについては、明確な基準は示されていないとされています。

著作権も制限されます

しかし、著作権も一定の場合、制限を受けることがあります。

著作権の制限に関しては、著作権法30条~50条に規定しています。

この記事で扱う裁判との関係では、営利を目的としない演奏に関する著作権法38条1項が問題となります。

同項は、次のように規定しています。

(営利を目的としない上演等)
第三十八条 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

著作権法38条1項

そこで、お金を取らずに非営利目的で奏者に対価を支払わずに演奏をおこなう場合、著作権の保護の対象外、つまり、奏者は著作権の使用料を支払わずに済むこととなります。

尚、聴衆から料金を取らず、非営利目的で演奏会をおこなっても、プロの奏者を招き、ギャラを支払ったような場合、著作権の使用料の支払義務が生じる可能性があることには留意が必要です。

著作権の使用料の支払いについて

上記の著作権法22条、2条5項、および38条からしますと、次のようなケースにおいて、他人の作詞、作曲した楽曲の演奏をおこなう場合、作詞・作曲者に対する使用料の支払義務が生じない/生じ得ることとなります。

使用料が生じない場合

  • 一人住まいの自宅の部屋でキーボードをひきながら気持ちよく歌った場合
  • 大学生数人の宅飲みで、参加者がギターの弾き語りをした場合(もちろん無料)
  • 結婚披露宴に招かれた新郎・新婦の友人が、無償で楽曲を演奏した場合

使用料が生じ得る場合

  • 結婚披露宴で、プロの演奏者にお金を支払って楽曲の演奏をしてもらった場合
  • 有料のチケットを販売し、自ら他人の楽曲を演奏した場合

音楽教室での楽曲の演奏時の著作権者への使用料が問題となった裁判

上記の著作権に関する解説をもとに、冒頭で触れました裁判についてみていきます。

事案の概要

この裁判は、教室または生徒の自宅において、音楽の基本や楽器の演奏技術・歌唱技術の教授を行っている音楽教室を運営する法人および個人ら(以下、「原告ら」「控訴人」「被上告人」といいます。)が、音楽教室における楽曲の使用(教師および生徒の演奏、ならびに録音物の再生)が、上記に引用しました著作権法22条の「公衆に直接・・・聞かせることを目的」とした演奏に当たらないことなどから、著作権管理事業者(以下、「被告」「被控訴人」「上告人」といいます。)は、原告らの音楽教室における被告の管理する楽曲の使用にかかわる請求権を有しないと主張し、同請求権の不存在確認を求め訴訟を提起したものです。

著作権関係の主な争点について

この裁判では、著作権関係では、下記の点が主な争点とされました。

  • 音楽教室における演奏が「公衆」に対するものであるか
  • 音楽教室における演奏が「聞かせることを目的」とするものであるか

1審裁判所の判断

まず、1審裁判所は、音楽教室における演奏が「公衆」に対するものであるかという点に関し、

・・・著作権法22条の立法過程においては,「公衆」の意義等について考え方の変遷はあったものの,学校その他の教育機関の授業における著作物の無形複製について一般的に著作権が及ばないという考え方は採られず,また,音楽教室事業者による営利を目的とする音楽教育は「社会教育」には当たらず,社会教育についての特別の権利制限規定も設けられていないので,営利を目的とする音楽教室事業者による音楽著作物の利用に著作権が及ぶかどうかは,上記のとおり,同法22条の要件を充足するかどうかにより決せられることとなる。
・・・原告らの経営する音楽教室における被告管理楽曲の演奏が著作権法22条の要件を満たすかどうかについては,音楽著作物である被告管理楽曲を演奏という形態で利用している主体が誰かという点についての判断が前提となるところ・・・原告らの音楽教室における音楽著作物の利用主体の判断に当たっては,利用される著作物の選定方法,著作物の利用方法・態様,著作物の利用への関与の内容・程度,著作物の利用に必要な施設・設備の提供等の諸要素を考慮し,当該演奏の実現にとって枢要な行為がその管理・支配下において行われているか否かによって判断するのが相当で・・・著作物の利用による利益の帰属については,上記利用主体の判断において必ずしも必須の考慮要素ではないものの,本件における著作物の利用主体性の判断においてこの点を考慮に入れることは妨げられないと解すべき・・・音楽教室のレッスンで演奏される課題曲の選定に関し・・・音楽教室等においては,教師が,原告・・・が作成したレパートリー集の中から,生徒の演奏の技量,習熟度等を考慮し,自ら又は生徒の希望も踏まえて,教育的な観点から課題曲を選定するものと認められ・・・他の原告らにおいても・・・と同様,生徒の演奏の技量,習熟度等を踏まえ,教師が,自ら又は生徒の希望も踏まえて,教育的な観点から課題曲を選定しているものと推認され,これを覆すに足りる証拠はない・・・生徒が任意かつ主体的に演奏するとしても,生徒が演奏する課題曲については,原告らと同視し得る教師が教育的な観点から選定する以上,音楽教室において演奏させる音楽著作物の選定に原告らの管理・支配が及んでいることは否定し得ないというべきで・・・音楽教室における演奏態様は演奏行為そのもので・・・音楽教室における生徒の演奏は,原告らと同視し得る教師の指導に従って行われるものなので,その演奏について原告らの管理・支配が及んでいるということができ・・・著作物の利用に必要な施設,設備等についても,原告らの管理・支配が及んでいるということができ・・・音楽教室事業における演奏技術の指導にとって,教師及び生徒が音楽著作物の演奏をすることは不可欠であり,かかる演奏をすることなく演奏技術を教授することは困難であることに照らすと,音楽教室の生徒が原告らに対して支払うレッスン料の中には,教師の教授料のみならず,音楽著作物の利用の対価部分が実質的に含まれているというべきで・・・音楽教室における音楽著作権の利用による利益は原告らに帰属していると認めるのが相当である。
・・・上記・・・のとおり,原告らの音楽教室で演奏される課題曲の選定方法,同教室における生徒及び教師の演奏態様,音楽著作物の利用への原告らの関与の内容・程度,著作物の利用に必要な施設・設備の提供の主体,音楽著作物の利用による利益の帰属等の諸要素を考慮すると,原告らの経営する音楽教室における音楽著作物の利用主体は原告らであると認めるのが相当・・・

東京地判令和2年2月28日

とした上で、

・・・前記・・・のとおり,著作権法22条に基づき演奏権について著作権者の権利が及ばないのは,演奏の対象が「特定かつ少数の者」の場合であるところ,「特定」の者に該当するかどうかは,利用主体との間に個人的な結合関係があるかどうかにより判断すべきで・・・音楽教室における音楽著作物の利用主体である原告ら音楽教室事業者からみて,その顧客である生徒が「特定」の者に当たるかどうかは,原告らが音楽教室のレッスンの受講を申し込むに当たり,原告らとその生徒との間に個人的な結合関係があったかどうかにより判断することが相当である。
・・・原告らが経営する音楽教室は・・・原告らとの間で受講契約を締結すれば,誰でもそのレッスンを受講することができるので,原告らと当該生徒が本件受講契約を締結する時点では,原告らと生徒との間に個人的な結合関係はない・・・したがって,音楽教室事業者である原告らからみて,その生徒は「不特定」の者に当たるものというべきである。・・・
・・・音楽教室における音楽著作物の利用主体である原告ら音楽教室事業者からみて,その顧客である生徒が「多数」の者に当たるかどうかは・・・著作権法22条の趣旨に照らすと,一時点のレッスンにおける生徒の数のみではなく,音楽教室事業の実態を踏まえ,社会通念に照らして,その対象が「多数」ということができるかという観点から判断するのが相当で・・・原告ら音楽教室事業者の一つの教室における生徒の数は・・・グループレッスンで最大10人程度と認められるが,音楽教室事業者は,継続的・組織的にレッスンを行っており,場合によっては,異なる地域に複数の教室を展開し,一定期間内(例えば,一月のうち)に異なる生徒を対象とする複数のレッスンを開講することもあるほか,生徒の中には受講を辞める者もいれば,新たに受講する者もいるなど,生徒の入れ替わりも生じ得る・・・音楽教室事業の実態を踏まえると,原告らからみて,その顧客である生徒は「多数」であると認めるのが相当・・・
したがって,音楽教室における生徒は,利用主体たる原告らにとって,不特定の者であり,また,多数の者にも当たるから,「公衆」に該当する。

東京地判令和2年2月28日

として、音楽教室の生徒を聴衆として、「公衆」に対する演奏と判断しています。

続いて、音楽教室における演奏が「聞かせることを目的」とするものであるかという点について

・・・著作権法22条は,「公衆に直接…聞かせることを目的」とすることを要件としているところ,その文言の通常の意義に照らすと,「聞かせることを目的とする」とは,演奏が行われる外形的・客観的な状況に照らし,音楽著作物の利用主体から見て,その相手である公衆に演奏を聞かせる目的意思があれば足りるというべきで
・・・原告らの音楽教室における演奏態様の概要は・・・例えば・・・①生徒が課題曲を初めて演奏する際などには,生徒が演奏する前に,教師が課題曲を演奏して課題を示し,②生徒が,それを聞いた上で,教師に対して,課題曲を数小節ごとに区切って演奏すると,③生徒の演奏を目の前で聞いた教師が,生徒に対する演奏上の課題及び注意を口頭で説明するとともに,必要に応じて当該部分の演奏の例を示し,④生徒は,教師の注意や演奏を聞いた上で,再度演奏するということを繰り返し行った後に,⑤最後に,生徒が練習してきた部分又は一曲を通して演奏するという形で行われるものと認められ・・・教師が演奏を行って生徒に聞かせることと,生徒が演奏を行って教師に聞いてもらうことを繰り返す中で,演奏技術の教授が行われるが,このような演奏態様に照らすと,そのレッスンにおいて,原告ら音楽教室事業者と同視し得る立場にある教師が,公衆である生徒に対して,自らの演奏を注意深く聞かせるため,すなわち「聞かせることを目的」として演奏していることは明らかである。
・・・また,生徒の演奏技術の向上のために生徒自身が自らの演奏を注意深く聞く必要がある・・・また,グループレッスンにおいては,他の生徒の演奏を聞くことが自らの演奏技術の向上にとって必要であると認められ・・・音楽教室における生徒の演奏は,原告らの管理・支配下で行われることから著作物の利用主体による演奏と同視し得るところ・・自ら又は他の生徒の演奏を聞くことの必要性,有用性に照らすと,その演奏は,公衆である他の生徒又は演奏している生徒自身に「聞かせることを目的」とするものであると認めるのが相当・・・
・・・原告らは,生徒自身はその演奏を他人に聞かれたくないと思うものなので,「聞かせることを目的」とするものではないと主張・・・しかし,そもそも,生徒がその演奏を他人に聞かれたくないと思うかどうかは,その生徒の個性や性格にもよるのであり,一般的に他人に聞かれたくないと断定し得るかどうかは疑問で・・・その点はおくとしても,「聞かせることを目的」とするかどうかは,外形的・客観的に判断すべきであり,個々の生徒が自らの演奏を他人に聞いてほしくないと内心で思っていたとしても,そのことは,「聞かせることを目的」とするかどうかの判断を左右するものではない。音楽教室における生徒の演奏は,音楽著作物の利用主体である原告らの演奏と同視し得るものとして,他の生徒又は自らに向けられたものであり,演奏する生徒が自らの演奏を聞いて課題を自覚し,あるいは,グループレッスンにおいて他の生徒に聞かせるためのものなので,その演奏は,公衆である生徒に「聞かせることを目的」とするものであるということができ・・・
・・・音楽教室における演奏は,音楽著作物の利用主体である原告らとの関係で,「公衆に直接…聞かせることを目的として」(公に)との要件を充足する。

東京地判令和2年2月28日

として、音楽教室における教師の演奏、および生徒の演奏の双方が「聞かせることを目的」とする演奏であると認定しています。

控訴審の判断

1審判決を不服として、原告が控訴をおこないましたが、その控訴審は、

教師の演奏については、

教師による演奏については,その行為の本質に照らし,本件受講契約に基づき教授義務を負う音楽行為事業者が行為主体となり,不特定の者として「公衆」に該当する生徒に対し,「聞かせることを目的」として行われるものというべきである。

知財高裁判決令和3年3月18日

として1審の判断を支持しています。

一方、生徒の演奏については、

音楽教室における生徒の演奏の主体は当該生徒であるから,その余の点について判断するまでもなく,生徒の演奏によっては,控訴人らは,被控訴人に対し,演奏権侵害に基づく損害賠償債務又は不当利得返還債務のいずれも負わない(生徒の演奏は,本件受講契約に基づき特定の音楽教室事業者の教師に聞かせる目的で自ら受講料を支払って行われるものであるから,「公衆に直接(中略)聞かせることを目的」とするものとはいえず,生徒に演奏権侵害が成立する余地もないと解される。)。
なお,念のために付言すると,仮に,音楽教室における生徒の演奏の主体は音楽事業者であると仮定しても,この場合には,前記・・・のとおり,音楽教室における生徒の演奏の本質は,あくまで教師に演奏を聞かせ,指導を受けることにある以上,演奏行為の相手方は教師ということになり,演奏主体である音楽事業者が自らと同視されるべき教師に聞かせることを目的として演奏することになるから,「公衆に直接(中略)聞かせる目的」で演奏されたものとはいえないというべきである(生徒の演奏について教師が「公衆」に該当しないことは当事者間に争いがない。また,他の生徒や自らに聞かせる目的で演奏されたものといえないことについては前記アで説示したとおりであり,同じく事業者を演奏の主体としつつも,他の同室者や客自らに聞かせる目的で歌唱がされるカラオケ店(ボックス)における歌唱等とは,この点において大きく異なる。)。

知財高裁判決令和3年3月18日

として、生徒の演奏については、公衆に直接聞かせる目的のものではないとしています。

上告審の判断

この控訴審を不服として被控訴人(1審被告)である著作権管理事業者が上告しましたが、その上告審において、最高裁は、

演奏の形態による音楽著作物の利用主体の判断に当たっては、演奏の目的及び態様、演奏への関与の内容及び程度等の諸般の事情を考慮するのが相当で・・・音楽教室のレッスンにおける生徒の演奏は、教師から演奏技術等の教授を受けてこれを習得し、その向上を図ることを目的として行われるのであって、課題曲を演奏するのは、そのための手段にすぎない。そして、生徒の演奏は、教師の行為を要することなく生徒の行為のみにより成り立つものであり、上記の目的との関係では、生徒の演奏こそが重要な意味を持つのであって、教師による伴奏や各種録音物の再生が行われたとしても、これらは、生徒の演奏を補助するものにとどまる。また、教師は、課題曲を選定し、生徒に対してその演奏につき指示・指導をするが、これらは、生徒が上記の目的を達成することができるように助力するものにすぎず、生徒は、飽くまで任意かつ自主的に演奏するのであって、演奏することを強制されるものではない。なお・・・受講料は、演奏技術等の教授を受けることの対価で・・・演奏すること自体の対価ということはできない。
これらの事情を総合考慮すると、レッスンにおける生徒の演奏に関し、被上告人らが本件管理著作物の利用主体であるということはできない

最判令和4年10月24日

として、生徒の演奏に関する控訴審の判断を支持し、上告を棄却しています。

この判例から、音楽教室においては、指導上の教師による生徒に対する演奏は著作権法22条により、使用料の支払いが生じることとなり、一方、生徒の演奏については、使用料が発生しないということになります。

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